MOGMOGというユニークな店名を初めて目にした人は、きっとどこか可愛らしい響きを感じるのではないでしょうか。
もともとは日本語の“モグモグ”から生まれた言葉で、口に食べ物を入れて噛む、その小さな動きを写しとった音です。
日本語には、音や雰囲気をそのまま言葉にしてしまう、不思議な文化があります。
“ワンワン”“ガチャン”といった擬音語、そして“しっとり”“ほっこり”のように、音のない情景を表す擬態語。
これらをまとめて“オノマトペ(onomatopoeia)”と呼びます。
でも、こうした言葉はとても曖昧で、だからこそ生き生きしている。
“カチカチ”のように、音と状態のどちらも描いてしまう言葉もあり、辞書の分類にきれいに収まらない、その“ゆらぎ”こそが、日本語らしい豊かさなのかもしれません。
雨の降り方ひとつとっても、“パラパラ”“シトシト”“ザーザー”。
同じ雨でも、空気の湿度や濡れた地面の匂いまで浮かんでくるのが、面白いところです。
日本語にあるオノマトペは2,000語以上。ふだん使われているものだけでも、400を超えると言われています。
そよ風は“そよそよ”、川は“サラサラ”、星は“キラキラ”。
耳を澄ませてみると、日本語がどれほど自然とともに生きてきた言語なのか、あらためて感じられます。

さて、話を店名に戻しましょう。
“モグモグ”をローマ字にすれば、“MOGUMOGU”が正しい表記です。
けれど創業者は、食品を扱うビジネスをするなら、“MOGMOG”というスペルにしようと心に決めていたそうです。
「“Mog”は、“More Good”って意味を込めてあるんだ」
そう聞いたとき、ただ愛らしいだけの名前ではないのだと、ふっと納得しました。
音の軽やかさの裏に、小さな願いが忍ばせてある。
そんなところが、なんだかエッセイのように響いてきます。

日常のなかの、ちょっとした“MOGMOGタイム”
“モグモグ”という言葉を聞くと、思い出す光景があります。
日本の女子カーリングチームが、試合の合間におやつを食べる「モグモグ・タイム」。
あの微笑ましい時間が流行語になるまで広まったのは、きっと“モグモグ”という音のやわらかさのおかげでしょう。
“パクパク”でも、“クチャクチャ”でも、あの空気感は生まれなかったはずです。
ニューヨークにある日本食マーケット“MOGMOG”も、そんな、ひと息つける場所でありたいと思っています。
サイクリングやランニングの途中に、散歩の帰り道に、ちょっとお腹がすいたとき。
ふらりと立ち寄れば、そこがあなたの“モグモグ・タイム”のエイドステーションです。
今日の暮らしが、すこし“More Good”になりますように……